先日,コントロール(目標に向かって組織を動かすこと)方法について二つに分けて考えることができるって話をしたので,ここにメモを置いておきます。
コントロールの発想としてcoercive control(強いる)とenabling control(可能にする)の二つがあります。
これは機械システムのデザインに関する考え方を経営システムに援用しようとする発想です。
以下,ツイッター貼り付け。
enabling control(授権的?支援的?)は,組織成員がより効果的に自分の仕事をし、彼らのコミットメントの強化を期待するコントロールであり,coercive control(強制的?)は,指示通りに組織成員が動くことを期待したコントロールである。訳語は定まらない。
— KOSUMAS@急に冷静になる芸風 (@cossi_etuweborg) 2015, 11月 25
coercive controlを目指すのであれば,deskilling(単純作業化)が重要となり,enabling controlを目指すのであれば,usability(使い勝手の良さ)を目指すことが重要。 — KOSUMAS@急に冷静になる芸風 (@cossi_etuweborg) 2015, 11月 25
また,どちらのコントロールに触れるかを規定するのは「修復」「内的透明性」「全体的透明性」「柔軟性」に対する考え方である。4つの概念に対してどう考えるかによってenabling型かcoercive型か分岐する。
— KOSUMAS@急に冷静になる芸風 (@cossi_etuweborg) 2015, 11月 25
「修復」とはプロセスの破綻を改善の機会と捉えるのかどうか,破綻をしないようにするべきものと捉えるのかに対する考え方である。「内的透明性」とはワークプロセスの可視化とその根拠の明確さの程度である。 — KOSUMAS@急に冷静になる芸風 (@cossi_etuweborg) 2015, 11月 25
「全体的透明性」とは個人に与えられたワークプロセスを超えて広範なシステムにアクセスできる程度である。そして「柔軟性」とはユーザーのスキルや判断に依存させる程度である。 — KOSUMAS@急に冷静になる芸風 (@cossi_etuweborg) 2015, 11月 25
計画と統制あるいは目的の達成を考えたときにどちらのコントロールに振るかはマネジャーの判断次第であるが,単純な作業に展開できるような場合はcoersive型も機能するかもしれないが,仕事に幅があり判断が介在するような場合はenabling型を想定したほうがいい。 — KOSUMAS@急に冷静になる芸風 (@cossi_etuweborg) 2015, 11月 25
なお,もちろん組織においてコントロールの対象は広範なので,全体としてみればこれらの型は相互排他的なものでもありません。ある側面はcoerciveで,ある側面はenablingであるということがあり得ます。
ただ複雑な状況になっていたり人に依存する部分が大きいときには,全てをルールで規定することができない(プログラミングできない)ことや,できたとしてもその通り動かないことが多いでしょう。そうすると,結局のところ参加者に依存する部分が多くなってしまいます。
ガバナンスの問題がホットになっておりますが,旧来型の守るべきものとしてのシステムではどうもうまくいかないようですので,enablingな方法を考えていかないといけないなと思うわけです。
一方で,enabling型はある意味性善説に依存しており,ややもすれば,フリーライディングな人や悪人を排除できないという危険性もあるので,そこも検討していかなくてはならないだろうと思います。