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定性的研究での論文の書き方と理論の使い方について

今更ながら、7月に京都と福岡で開催したリサーチセミナーの報告書を出しました。そこでメスナー教授から教えてもらった国際ジャーナルに定性的研究の掲載を目指すためのチップスについてまとめる機会があったのでここで共有しておきます。なんとなく個人的には3点重要なポイントがあったなと思います。そしてその3点は密接にかかわっていてほぼ同じ問題なんですが。それは下記3点です。

1. 理論の使い方の問題
2. 論文をどの先行研究の延長線上に載せるかを明確化問題
3. 研究の面白さの伝え方問題(2とほぼ同じ問題)

理論の使い方の問題

理論というのは事象を説明するために必要とされている側面と、その理論の中で導出される研究課題によって同じ理論を適用した先行研究を拡張するために用いるという側面があるということです。つまり、理論を用いる時は、その理論を適用することで説明したい事象がわかりやすく(understandable)なることと、理論から事象を見ることによって導出される研究課題に取り組むことが重要だということです。

論文をどの先行研究の延長線上に載せるかを明確化するべしという問題

どの先行研究の延長線上にあるのかを明確にしないとジャーナルで議論されている課題と関連づけられないため評価されないということです。これについてはメスナー教授は実践的な方法を教えてくれました。まず3本の具体的な論文をあげ、それぞれの論文のどの部分の知見を拡大する研究か伝えるように文章を書くと良いとのことでした。

研究の面白さを伝えるべし問題

2点目の変形版なのですが、取り組んでいる研究の面白さを丁寧に伝えなくては、ケース自体の面白さに目を奪われるため学術的な貢献が理解しにくいということです。そしてその面白さは先行研究との差異部分として現れるから先行研究との差異をいかに説明するかが重要となるということです。

まあ、こう書いてしまえば研究のお作法そのものとも言えるかもしれませんが、意識してやらないと思いの外伝わらないってことなのでしょう。言語も違えばコンテキストも違う世界中の研究者とコミュニケーションをするというのはそういうことなんでしょう。理論は国際的な科学コミュニケーションのためにあると言っても過言ではないというのが最近の私の理解です。

さて、インスブルックにきて1週間が過ぎてしまいましたが、よくわからないままとりあえず過ごしています。こっちではドラッグストア的な日用品をまとめて買える便利ショップがないのが目下の困ったところであります。ちなみにこの写真は旧市街のメインストリートなんだけど、まるで絵画のような風景です。通勤する道から少し外れるとここです。すごい。