父と子とビジョンと組織の話

大塚家具の問題が家具屋姫とかいってナッツ姫との対比でおもしろおかしく注目を集めていますね。そんなくだらない駄洒落は言いたいだけだろって感じなのですが,先日株価が暴騰することになった中期経営計画が発表されたんで,この話題に便乗して記事を書いてみます。この計画を見る限り,この女性社長は非常にロジカルなのがよくわかります。銀行出身という感じがします。

まあビジネスモデルや戦略に関する善し悪しはさんざんいろんなところで語られているけど,ここではビジョンとか理念からアプローチを見てみたいと思います。


ビジネスモデルとかに関してはこの辺をご参照
大塚家具、「お家騒動」で見落とされた本質-家具業界への2つの革命と3つの減速要因-
http://toyokeizai.net/articles/-/61988
相いれぬ父娘 大塚家具、泥沼化する「お家騒動」
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO83601740U5A220C1000000/


 

さて,過去の理念やビジョンについてはぱっと出てこなかったので会長のメッセージを見てみましょう。

株式会社大塚家具は1969年の創業以来、総合インテリア企業として、お客様により豊かな住空間を提供することを使命に歩み続けてまいりました。

当社の特長は、独自のシステムの構築により、すべてのお客様に世界中の優れた価値ある商品を安心と信頼の価格で、しかも、トータルインテリアの考えに基づく専門家の適切なアドバイスの下で納得してご購入いただく、という理想を実現したことにあります。

その原点となっているのは、伝統工芸品である総桐箪笥の製作において名人と言われた先代から受け継いだ匠の技を尊ぶ心、そして、その技の結晶をより多くのお客様にお届けしたいという熱意です。
創業当時から一貫して合理的な流通の仕組みの構築に取り組み、日本中、世界中の優れた品々をお客様にお届けするべく努めてまいりました。
http://www.idc-otsuka.jp/company/ir/president-message.html

と,まあ熱い理念を掲げておられる訳です。さすが創業社長です。キーワードは豊かな住空間の提供,トータルインテリア,安心と信頼の価格,納得してご購入あたりでしょうか。今でも通用するかどうかは別として設立当初から,インテリアに対してのビジョンがあったのでしょう。それに従って組織やビジネスモデルが構築され,その豪腕で社内を引っ張ってきたことが推察されます。ある意味創業社長だからこそできる経営手法かもしれません。

現場の従業員曰く「現場の人間はついていくだけ」(http://news.livedoor.com/article/detail/9836109/)というのも,強烈なリーダーシップのもと醸成されてきた社内文化なのでしょうか。

一方現在の社長のビジョンを見てみましょう。

idcビジョン

あまり力が入ってませんね。将来像としてはかなり広くとっています。 創業社長の強烈なビジョンを受け継ぐというのはなかなか難しいのだろうと思いますが,現社長はビジョンを示すよりも足下の業績を固める事を重視しているのでしょう。もちろん強烈なビジョンで引っ張るのではなく,組織文化を醸成したり,ボトムアップ的に経営するスタイルもあり得ますからそれはそれでいいのでしょう。

ただ,強烈なリーダーシップで作り上げられてきた組織とその文化の中で,現社長の分析的戦略である中期計画が実施できるか,そこが問題となりそうです。社内の複数の制度が互いに連携しながらひとまとまりになって動くのだというコントロールパッケージという考え方が管理会計分野にはあるんですが,そのパッケージの一部分を変えるとどうなるかというのは非常に興味深い事例です。強烈なビジョンをなくし,分析的な戦略で攻めるとするとこれまでの組織とはかなり違ったものになるのではないでしょうか。

詳しい議論は忘れましたがKober et al.(2007)の研究では,戦略変化を実施するにはマネジメントコントロールの利用の仕方として,より業績のモニタリングを強化するとともに,会計システムや情報伝達の仕組みを使って階層をこえたインタラクションを行う事で,変化が促されるするというような結論を出していました。

この事から考えると,この騒動を機に社内で階層を超えて議論できるような体制ができるといいのかもしれないですね。

父と子との関係とビジョンと組織の関係もまた似ている。そんな言いたいだけの意味不明な事を言って締めたいと思います。

いずれにせよバトンタッチはかなり大変な状況になってしまっていますが,うまいこと引き継いで従業員,顧客含め関係各者が幸せになるといいなあと外から願う次第です。

 

父と子とビジョンと組織の話」への1件のフィードバック

  1. コメントのテスト。
    あとシェアボタンの挙動もおかしいか。

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